むかしむかし、ある北国の川に、それはそれは大きなサケが住んでいました。
人びとは、そのサケを大助(たすけ)と呼んでいます。
毎年、秋がすぎて、チラチラ雪が降りだすころになると、海からたくさんのサケがのぼってきます。
大助は、そのサケたちを案内して、ずーっと川上の卵をうむ場所へ連れていくのでした。
「おお、今年もサケがきた」
「大助だけは、アミにかけるでないぞ」
漁師たちはそういって、道案内の大助が通りすぎてから、サケをとりはじめました。
ところがその川べりに、たいそうお金持ちの長者(ちょうじゃ)がすんでいました。
長者は、おおぜいの人をやとっていて、
「どうじゃ、見渡す かぎりの山の幸(さち)、川の幸は、みな、わしの物さ」
と、いばっています。
ある日、この長者が、やといの人たちを集めると、
「サケの大助とやらを、とって食ベたら、さぞかしうまかろう。みなの衆、アミをつくれ。よいか、川幅いっぱいの大アミをつくるのじゃ」
と、いいつけました。
みんなはビックリしました。
けれど、長者のいいつけですから、きかないわけにはいきません。
何日も何日もかかって、長い長い大アミをつくりました。
いよいよアミができあがった、晩のことです。
長者が眠っていると、まくらもとに白いひげの仙人(せんにん)のようなおじいさんが現れました。
「これ、長者よ。あすの朝、大助がサケを連れて川をのぼる。いくらでもたくさんとるがよい。ただし、大助だけはアミにかけないでくれ。たのんだぞ」
そういい残して、おじいさんの姿は、どこへともなく消えました。
つぎの日の朝、長者は夜が明けないうちから、やといの人たちを呼び起こし、川にアミをはらせました。
やがて海の方から、さざ波をたてて、かぞえきれないほどたくさんのサケがのぼってきました。
いちばん先頭には、特別大きい大助の姿が見えます。
みんな、まっすぐアミの中へ飛びこんできました。
それを見た長者は、大声をあげて、
「それ、かかったぞ。大助を逃がすな、アミを引けーい!」
と、さけびました。