むかしむかし、ある村に、ハンスとクンツという、人のよいお百姓(ひゃくしょう)さんがすんでいました。ある日のこと、二人はたきぎをひろいに森へ出かけていきました。道のとちゅうで、二人は一人の男にであいました。「こんにちは。あなたがたは森へいくのですか? わたしも、おともさせてくださいよ」
男はたきぎをしばるつなをもっていたので、二人はすっかりしんじて、「ああ、いいとも。いっしょにいきましょう」と、いいました。男はキバのようなするどい歯をして、こわい目つきをしていたのですが、人のよいハンスとクンツは、男にしんせつにしてあげました。
そして楽しく話をしながら、森まで歩いていきました。さて、森についた三人は、さっそくたきぎをひろい集めて、たばにしていきました。「さあさあ、これだけ集めればじゅうぶんだ。そろそろ帰りましょうか」三人は重いたきぎをせおい、あせをふきふき歩きました。
やがて、ひろい野原にさしかかりました。「ああ、あつい、あつい。あせがびっしょりだ。どうです。たきぎをおろして、このあたりで休みませんか?」ハンスがいうと、男も答えました。「まったく、重たくてかなわん」みんなは大きな木の下で、ひと休みすることにしました。
遠くの方に、五、六頭のウマが、子ウマを連れて草を食べているのが見えました。「少し、昼寝でもしませんか?」「ああ、いいですね」ハンスもクンツも賛成しました。ハンスはすぐにねむってしまい、クンツもウトウトしていた、その時です。後ろの方で、ガサガサと音がしたのです。(おや、何の音だろう?)
クンツは寝返りをうつと、そっと、うす目で音のする方を見ました。ちょうど、男が服を脱いでいるところでした。そして裸になった男は、たちまち灰色のおそろしいオオカミになったのです。オオカミはウマのいる方へものすごい早さでかけていくと、そこにいた子ウマにとびかかって、あっという間に食べてしまったのです。「うむ、あまりうまくないウマだったな。まあいい、口直しに、後であの2人の人間を食ってやろう」
オオカミは口の周りについた血を長い舌でペロリとなめ回すと、人間の姿になって服を着て、なにくわぬ顔で2人を起こしました。「そろそろ起きて、出発しようか?」ハンスは、すぐに起きあがりました。クンツは恐怖のあまり、ガタガタとふるえていましたが、オオカミにばれないよう、なんとかふるえをがまんして起きあがりました。
三人はしばらく道を歩いていましたが、オオカミの男が、とつぜんお腹を押さえて立ち止まりました。「あいてて! あいてててて!」クンツには、その理由がすぐにわかりました。「やい、オオカミ男め! 子ウマを一頭たいらげれば、誰だって腹が痛くなるさ。さあハンス。逃げるならいまのうちだ!」「なんだと、おまえたちも食ってやる!」
オオカミ男は2人を追いかけましたが、お腹が痛くてうまく走れません。ハンスとクンツは、なんとかオオカミ男から逃げることが出来ました。