むかしむかし、大きなおやしきに、ひとりの男の人がすんでいました。この人は、お屋敷のくらの中にお金や宝石をたくさんもち、いろいろなところに別荘をもっている大金持ちです。でも、青いひげがモジャモジャとはえた、とてもこわい顔をしているので、人々から『青ひげ』とよばれてきらわれていました。
そしてもうひとつ、青ひげには、ヘんなうわさがありました。それは、今までに六人もおくさんをもらったのに、みんなどこかへいなくなってしまうという、うわさでした。ある時、青ひげは近くにすむ美しい娘を、お嫁さんにしたいと考えました。そこで娘とそのお母さんや兄弟たち、それに友だちもよんで、おいしいごちそうをしてもてなしました。
みんなは別荘にとまり、何日も何日も、散歩やダンスやつりをして、楽しくすごしました。そのあいだ、青ひげはいっしょうけんめいニコニコと、やさしい顔をしていました。しばらくすると、娘は青ひげのお嫁さんになってもいいと言いました。青ひげは大喜びで、すぐに結婚式(けっこんしき)をあげたのです。
ある日、青ひげはおくさんをよんでいいました。「わたしは、明日から大切な用があって旅に出かけることになった。だから、あなたにやしきのカギをあずけていこう」そういって、カギのたくさんついているたばをとり出しました。「これは、家具の入っているくらのカギ。これは、金や銀の食器の棚のカギ。これは、宝石箱のカギ。わたしのるすのあいだ、たいくつだったら、このやしきにいくら友だちをよんでもかまわないし、どの部屋に入ってもかまわないよ。ただし・・・」
青ひげは急にこわい目をして、おくさんをジロリと見ました。「この小さなカギだけは、使わないように」「はい。でも、これはいったいどこのカギなのですか?」おくさんがたずねると、青ひげはこたえました。「ろうかのつきあたりの小さな部屋のカギだ。いいな。その部屋には、ぜったいに入ってはいけないぞ」「わかりました」
こうして青ひげは、つぎの日、出かけていきました。おくさんは、はじめのうちは友だちをよんで楽しくすごしていましたが、そのうち、たいくつになってきました。すると、あのいけないといわれた部屋に入りたくて、たまらなくなりました。「だめ、いけないわ。
・・・いけないかしら。・・・少しだけなら。・・・大丈夫よね。・・・大丈夫よ」おくさんは、小さなカギで小さな部屋のドアを開けてしまいました。「あっ!」中を見たおくさんは、ドアのところに立ったまま、ガタガタとふるえだしました。
部屋のかべには、たくさんの女の人の死体がぶらさがり、ゆかには血がベッタリと、こびりついていたのです。それはみんな、青ひげのまえのおくさんたちでした。「ただいま」そこへ、青ひげが帰ってきたのです。おくさんはビックリして、カギをゆかに落としてしまいました。
おくさんはあわててカギをひろうと、ドアにカギをかけて青ひげのいる玄関にいきました。「お、お、おかえりなさい」おくさんを見た青ひげは、ニッコリ笑いました。「やあ、すっかり、おそくなってしまったね。・・・おや、どうしたんだい? そんなにふるえて」「い、いえ、べ、べつに」
ガタガタとふるえるおくさんを見た青ひげは、急にこわい顔になっていいました。「わたしていたカギを、出してもらおう「はっ、はい」おくさんがふるえる手で差し出したカギを見た青ひげは、キッ! と、おくさんをにらみつけました。カギには、あの部屋で落としたときについた血が付いていたのです。「・・・いけないといったのに、やっぱり見たんだな」「ゆるしてください、ゆるしてください」
おくさんは青ひげのまえにひざまずいて、ないてあやまりました。でも青ひげは、ゆるしてくれません。「おまえは悪い女だ。・・・殺してやる!」「ゆるしてください、ゆるしてください」「・・・では、お祈りの時間だけまってやろう」「ああ、神さま・・・」
おくさんは、必死で神さまにお祈りします。青ひげは刀をぬくと、お祈りをしているおくさんの首をきろうとしました。ちょうどその時、玄関のドアがひらいて、ふたりの男の人が入ってきました。おくさんのふたりのお兄さんたちが、運よく妹をたずねてきたのです。
ふたりは妹が首をきられそうなのをしって、すぐに青ひげにとびかかって、殺してしまいました。死んだ青ひげには、ほかに、しんせきがいなかったので、お屋敷や別荘、お金や宝石は、ぜんぶおくさんのものになりました。 おくさんは、それからはずっと幸せにくらしたということです。