ふるさとや家族について、はじめて意識的に考えたのは18歳のときだった。つまり、家族と離れて、東京で一人暮らしをはじめたときである。
かなり重症(注1)のホームシック(注2)で、休みになるとすぐに帰省(注3)した。で、帰って何をするかというと、特別なことは何もない。
ふるさとは、帰ってみると、実になんでもないところである。そして、そのなんでもなさが、ふるさとの魅力なのだ、と思う。
あたりまえのことの大切さやありがたさに気づくためには、すこし離れて見るのがいい。ふるさとを離れると、ふるさとのよさが見えてくる。
(俵万智『101個目のレモン』文藝春秋による)
(注1)重症「じゅうしょう」:病気が重いこと
(注2)ホームシック:ふるさとを離れている者がふるさとを恋しく思う様子
(注3)帰省「きせい」:ふるさとに帰ること
【問い】 本文の要約として最も適当なものはどれか。
1 ふるさとから離れていると、都会にあるものがふるさとにはない二とに気づくことがある。
2 ふるさとは都会から遠く離れていて、何もないように見えるが、よく探してみると、都会と同じような魅力がある。
3 ふるさとのように、あるのが当然だと思っているものの価値は、そこから少し距離を置くことでわかるようになる。
4 ふるさとで家族と暮らしていると、そのありがたさが意識できるので、なんでもない日常の生活の大切さがわかるようになる。
正解:3
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