翌朝、目をさまし階段を下りた彼女は、愕然(がくぜん)とした。部屋の中が見事に荒らされていたのだ。「やられたわ。あのときの物音は、やっぱり......」慌てて部屋の中を調べてみたが、金目(かねめ)の物、一切合財(いっさいがっさい)が無くなっていた。「と、とにかく警察に......」彼女は必死に気を落ち着かせると、受話器を取った。が、彼女は番号を押すその手を、途中で止めてしまった。そして、受話器を戻すと部屋の隅に駆け寄って、引出しを開けた。「な、なんてこと!」彼女は呆然とその場にひざまずいた。もう警察に電話することも、彼女にはできなかった。「巧妙すぎるわ。あんまりじゃないの」しかし、彼女にはどうすることもできなかった。ただ、盗賊のあまりの頭の良さと卑劣(ひれつ)さに、地団太(じだんだ)踏んで悔しがるだけだった。
彼女は叫んだ。
「これじゃ、警察に届けるどころか、撮影にもいけないし、どこにもいけない。買物にいくことだって、出前をとることだってできやしないわ。金目のものだけならまだしも、(①)まで全部、盗んでいくなんて!」
(星新一編『ショートショートの広場5』講談社文庫による)
地団太踏む:くやしさのあまり、足ぶみをする
1、(①)に入ることばは、次のどれが最も適当か。
1くつ 2電話機3化粧品4財布
答え:3
解説:
「彼女」の心理状況をもとに推測する問題。警察への電話をやめたのは、引出しを開けてからである。つまり、引出しの中にあったものがなくなったのである。これで「財布」か「化粧品」が残る。さらに「撮影にも行けない」「買い物に行くことだって、出前をとることだってできやしない」とあるが、「金目をものだけならまだしも」とあるから4は×。「撮影」ということから「彼女」=女優?とう推測もしてほしい。
以上就是日语能力日语能力考N2读解练607的相关内容,阅读没有更好的办法,基本知识掌握牢固的前提下要多做练习,把握做题规律,祝各考生取得一个好成绩。
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