まずわが国の司法は、小さくて、しかもきわめて審判の期間が長く、遅い。そして何かにつけて利用しにくい。そのわりには結果に納得しがたい。このようなことをいわれていて、私もそのとおりだと思うわけです。
私は以前より、わが国の司法というのは本来果たすべき機能の二割しか果たしいないという意味において、「二割司法」であると言ってきました。それでは残りの八割はどうなっているのでしょうか。
まずいちばん大きいのが「注2」「泣き寝入り」です。たおえ正しい主張であっても、どうせ通らないだろう。争いたくても争えない。そんなことはいくらもあるわけです。私はこれを「無意識の泣き寝入り」と言っています。
具体的に、昭和53年に「注3」最高裁判所が判決しました「ジュース表示事件」を挙げてみます。わが国で一般に市販されておりますジュースのなかにまったく果汁(かじゅう)の入っていないものがありました。果汁が入っていないのだから、そういう製品はちゃんと「無果汁」と表示すべきではないかということで、「主婦連」の方々が争いを起こされました。ところが、一般の消費者はこのよううな表示規則については争うことができない。まず当事者適格がないのだ、ということで「注5」門前払いになったという有名な判決があります。そしてこの判決はいまだに生きているわけです。
私たちが、たとえば今度の運賃の値上げは高いじゃないか、あるいはガス料金や電気料金の上がり方はおかしいじゃないかと思っても、これはすべて大臣の認可にかかっております。私たち利用者は直接不服の申し立てが裁判の場ではできないということになってくるわけです。こういうことからしても私たちは無意識のうちにずいぶんと「泣き寝入り」をさせられていることが多いと思うわけであります。
二つ目には、日本には「政治決着」が多いと思います。「和を持って貴しとする」という言葉がありますが、なるべく裁判にしないほうがいいということで、いわゆる政治決着を図るといいうことになります。私がかつて担当しました「注6」住専問題にしましても、なぜ潰れた住専七社に公的資金が導入されなければならないのか、これは端的に言えば、いわゆる金融族の国会議員よりも農林族の国会議員のほうが強かったからであります。だからこのような政治決着になる。政治決着というものがどうして悪いのかといいますと、なによりルールがないから、要するに、数の多いほうが勝つということになってくるからであります。私はこういうものが正しい解決の姿であるとは到底思えませんし、法の支配、あるいは正義が実現しているとは到底言えないのではなかろうかと思っているわけです。
三つめには「暴力」があります。暴力にも大きく二つありまして、それは「闇の勢力」と「ゴネ得」です。闇の勢力とはいわゆる暴力団等を中心するものであります。闇の勢力によって事態が解決していることも、非常に多いものなのです。あるいは集団的な力によって、結果的に道理を引っ込ませてしまうやり方も見られます。これがゴネ得です。
四つめとしては、「行政指導」です。わが国の社会は、難しいことは「注7」お上(かみ)がちゃんとしてあげる、国民はおとなしくお上の指導を受けていたらよろしいということで、よくいえば親切に、何もかもが行政指導の名のもとに行われてきたという面があります。
結局のところ、わが国における法と正義というものは、私たちは市民の力で、あるいは自分の力で解決していくというものではなしに、これまで挙げてきたような「注8」アブノーマルな形のなかで、片づけられてきてしまったと思うのです。
(中坊公平『日本人の法と正義』NHK人間講座2001年1月~3月期による)
「注1」司法:法によって行う裁判
「注2」泣き寝入り:相手の不当な仕打ちを不満に思いながら、どうすることもできずにあきらめること
「注3」最高裁判所:日本の司法制度で一番上の裁判所
「注4」主婦連:主婦連合会の略。1948年に結成された女性団体。主婦の意見を政治や社会問題に反映させたり、消費者の利益を守るための活動を行う
「注5」門前払い:来た人を会わずに追い返すこと
「注6」住専:住宅金融専門会社。住宅ローン専門会社で、出資別に8社あったが、7社は経営破綻した。
「注7」お上:政治を行っている期間のことをいう。政府。
「注8」アブノーマル:abnormal 正常な状態ではないさま
1、①「私もそのとおりだと思う」とあるが、どのように考えているのか。
1日本の司法制度は使いにくく、内容も理解しにくいという欠点がある
2日本の司法制度は利用するのに時間がかかるのであまりよくない
3日本の司法制度は小さいが、ゆっくり時間をかけているので良い
4日本の司法制度は結果を理解するのは難しいが悪くはない
只有1的答案是归纳性的,其他均为不完整。指代词多为前文,请注意。
2、②「争いを起こされました」とあるが、どんな争いを起こしたのか。
1ジュースのなかに果汁が入っていないので果汁を中に入れろという争い
2ジュースのなかに果汁が入っていないので「無果汁」と書けという争い
3ジュースのなかに果汁が入っていないのでその商品を売るなという争い
4ジュースのなかに果汁が入っていないので飲んではいけないという争い
正确答案:2ジュースのなかに果汁が入っていないので「無果汁」と書けという争い
解释:争论是由是否该表示“无果汁”字样引起的。
3、⑦筆者の主張に一番近いものはどれか。
1日本の司法は二割しか機能していないのでちょうどいい
2法や正義は市民の力、自分の力で解決していくべきだ
3日本の司法はアブノーマルなのでたいへん危険である
4法と正義が日本ではよく整備されているので安心だ正确答案:2法や正義は市民の力、自分の力で解決していくべきだ
解释:最后一段是作者的总结。从两成司法开始而展开是说明。1褒义,排除。3 不够全面,排除。4文中未提到,排除。
法律,正义是要为民众谋利的,也正是作者理想中的世界的定义。
4、④「私たち利用者は直接不服の申し立てが裁判の場ではできないということになってくるわけです」とあるが、なぜか。
1運賃やガス・電気料金の値上げには理由があり、大臣が認可しているから
2私たちは無意識のうちに「泣き寝入り」させられていることが多いから
3裁判の場ではなく鉄道や電気の会社に直接文句や不満を言うべきだから
4ふつうの消費者には当事者適格がないという過去の判決が生きているから
正确答案:4ふつうの消費者には当事者適格がないという過去の判決が生きているから
解释:从文中“いまだに生きている”引出,说明当事者无资格的例子可判断。
5、⑤「政治決着」について、筆者はどう考えているか。
1数の多いほうが勝つのだからいい
2裁判をしないのだからよくない
3法の支配や正義が実現していない
4正義が実現しているから正しい正确答案:3法の支配や正義が実現していない
解释:从“政治決着というものがどうして悪いのかといいます”判断,以下均是是举例为什么不好的原因。选3.
6、⑥「行政指導」に対して、日本の国民はどうのように対応してきたか。
1国がしてくれることには素直に従った
2国の指導を受けるのは良いことだと考えた
3難しいことは国にしてあげるようにした
4国は親切なので何もかもしてくれた正确答案:1国がしてくれることには素直に従った
解释:“おとなしく指導を受け”可判断。
7、③「当事者適格がない」といわれたのはだれか。
1裁判所
2販売業者
3主婦連の人
4筆者
正确答案:3主婦連の人
解释:当事人一词来判断排除1(非人类)。2是果汁销售商,不可能自己告自己,排除。4笔者只是描述,旁观,没有参与。
翻译:首先我国的司法范围狭窄审判的时间非常缓慢。任何资源又不易利用。但其结果是难以信服。据说有这样的事,我当然也是那样认为的。
比起过去,所谓的我国司法只不过发挥了原本两成作用,于此意义上我曾有过“两成司法”的说法。那么残留下的八成又去了哪里呢?
罪魁祸首即“忍气吞声”。就算正确主张,无论如何也通不过的吧。想争也无法争辩。那种事到处都有。我说这是“无意识的吃哑巴亏”。
具体来说,在昭和53年(公元1978年)最高法院判决的“果蔬汁juice门事件”中可见一斑。我们一般市面上销售的果蔬汁中是完全不含果汁。正因未加入果汁成分,是不是该在所产商品上明确标“无果汁”这件事,妇女联合会各处展开了讨论。但普通消费者对于这样标识规则是不能争辩的。由于第一当事者没有资格而吃了闭门羹形成了著名的判决。而且这判决仍祸延至今。
我们就是觉得诸如这次的运费上涨太高,或者煤气费电费等上调方式太可疑等,但这些都由大臣认可来决定。利用者的我们逐渐成了连裁判直面不服的申诉的场所都没有。由此可见我们在不知不觉中吃了许多“哑巴亏”。
第二点,在日本中“政治解决”太多了。虽有“以和为贵”的成语,尽可能不裁判为好的观点发展成所谓的进行政治解决协商为佳。我曾经担当过住房金融专门公司的问题中,为什么一定要往已经溃败的住房专门七家公司中注入公共资金,说得极端点,也就是所谓的与金融族的国会议员比起来,农林族们更强势。所以就形成了这样的政治解决。为何要说政治解决是这么坏的东西呢,源于它比起其他来是没有规则的。简而言之,少数服从多数。我怎么也不觉得这是正确的解决姿态,无论如何也无法说法律的支配,或者是实现了正义。
第三点为“暴力”。暴力之中又分为两大派。“黑暗势力”及“关系利益”。黑暗势力就是所说的以暴力集团等中心。由黑暗势力解决事态,非常之多。或者根据集团性力量把硬把道理拉近结果上的方法也是很常见的,这就是关系利益。
第四点则是“行政指导”。我们社会难在政府给予什么,国民就温顺接受政府的指导还以此为好。要说起来的话,存在着一切事情都在好意的“政治指导”的名义下执行的方面。
结果,在我国法和正义,是无法依靠我们市民的力量或自身的来解决,到此所举的例子不过是正常形式中的,稍作整理的沧海一粟罢了。
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